□冷たい月□
筋肉に無駄が無く引き締まる躰が、月明かりに照らされる。
黒い髪が悟空の与える刺激によって、一度、二度と揺られている。
もうどれ位経つのだろう。
二人の呼吸は乱れ、肌を伝う幾筋もの汗。
時折小さく洩れる“カカロット”と言う声は悟空をより激しくさせた。
べジータの首筋に幾つも残される赤い刻印は悟空との情事の印。
その刻印は濃い色から薄い色までそれぞれだった。其処に更に深紅に近い新たな刻印を加える。
薄く開かれた唇は首筋から胸元へ。べジータの肌はそれを未だ受け入れられていない。
何度も繰り返される情事に馴らされている筈なのに。
悟空は不思議で仕方なかった。
何度同じ事をしても、べジータの反応が新鮮であったから。
更に深く悟空自身を突き立てると、大きくべジータのしなやかな背中が反り返る。
「…カ、カカロット…やめ…ろ」
「べジータっ、まだまだだ…」
二人の重みが掛かるベッドは大きく軋み、シーツを掴むべジータの指先が白くなっていた。
悟空の上で逃げるべジータを悟空は腰を掴み、更に深く。何度も何度も貫いた。
ガクガクと震える両脚を広げ、中心にあるべジータ自身を悟空の右手で扱きあげると先端からは透明の液が零れ落ちた。
その先端に指を絡めると、ねっとりと透明な糸を引く。
指先を自分の口へと運ぶ。
悟空が口に含む仕草を見ているだけでべジータ自身を舌で舐め上げられている様な錯覚に陥る。悟空の薄く開けられた瞳がそうさせているのだろう。悟空は満足そうに自分の指を舐め終え、べジータに更に刺激を加える。幾度と無く悟空に刺激を加えられているべジータ自身はもう限界だった。
「カカロット…俺は…もう…」
「なんだ、べジータもう限界か?」
「くっ…!」
瞼をきつく閉じるべジータ。その端からは涙さえ零れ落ちている。硬く噛締められている唇からは、鮮血が滲み出ていた。
「べジータ、そんなに噛むなよ。血が出ちまってるじゃねーか。ほら」
悟空はそっと唇を舌でなぞる。開かれた唇に悟空は歯列を割って舌を捩じ込ませる。初めは頑なに拒否をしていたべジータだったが、観念したかの様に悟空の舌の動きに合わせて自分の舌を絡め始める。どちらとも無く唇を離すと、一筋の唾液が糸を引いた。
「さぁ、べジータ続きだ…」
「…カカロット…」
更に深くべジータの体内を貪る。一点を擦り挙げられるとべジータは大きく痙攣をした。
悟空の掌の中で大きく脈打つべジータ自身は先端から白濁した液を流していた。
液体を綺麗に舌で拭い去ると、下から今まで以上に激しく悟空は突き上げ、べジータは大きく揺さぶられる。
「べジータ…おらも…もう限界だぁ…」
額に伝う汗を揺さぶられながら、べジータは舌で舐め取る。
「あぁぁ…」
べジータの悲鳴に近い甲高い声が悟空の耳元を擽る。
悟空はべジータの体内へと吐き出した。
呼吸の整わない悟空の厚い胸板を見つめている。
その視線に気が付くと、体勢を変えてべジータと向き合う格好になる。慌てて視線をそらすべジータに悟空は顎を掬い上げ、唇を重ねた。
不意に重ねられた唇にべジータは慌てて抵抗する。
「きっ、貴様!何処まで俺様を女扱いするんだ…」
「そんなに冷てー言い方するなよ。おらは、べジータを女扱いした覚えは今まで一度だってねぇーぞ。おめーはどう見たって男だしな。そんな強ぇーヤツは女じゃ中々いねぇーぞ?」
「…。な、なら何故」
途中まで言いかけたべジータは慌てて口を噤む。
「ん?何か言ったか?」
「いや、何でもない…」
顔を背けて悟空に表情を読まれない様にしたが、それは無駄な事だった。耳まで赤く染まる姿を悟空に見られているから。更に悟空を欲情させるきっかけにしか過ぎない。
「なぁ、べジータもう一回!」
そっぽを向いたべジータに乗り掛かる様に顔を覗き込む。
目尻を赤く染めたべジータは力一杯抵抗する。
「カカロット!何を考えているんだ!!」
一瞬にしてべジータの黒髪が黄金色に変化する。超化してエメラルドの冷たい瞳。
鈍い音が部屋に響く。鳩尾にべジータの拳が見事に入っていた。
腹を摩りながら悟空は涙目になっていた。不意打ちとはいえ、べジータの一発は強烈に悟空に効いていた。
「っ痛てぇー…。別に良いじゃねぇーか…」
唇を尖らせて拗ねた振りをするがべジータには通用しなかった。
キッと睨みを利かせるべジータに悟空は身の危険を感じ両手を挙げて降参した。
「調子に乗るな、カカロット!此処で殺されたいか!!」
「そんなに怒るなよ…もうしねぇからさ!」
「…く、なら良いが…」
渋々普段のべジータに戻る。
「何も其処まで怒る事ねぇだろ?」
「……貴様、もう帰れ!夜が明けるぞ…」
再び悟空に背を向けて、べジータは布団を被り直した。
「…わかった…べジータ、又来る…」
悟空は名残惜しそうにべジータの首筋に唇を重ねて、ベッドから離れた。
床に脱ぎ散らかされている胴着を拾い上げ、キュッと帯を締める。
「じゃぁ、又夜にな…」
そう言い残して、悟空は窓から飛び去っていった。
何時まで続くか判らない情事。
あんな言い方しか出来ない自分に腹が立つ。が、悟空は毎晩の様にべジータの元へとやって来る。明日もきっと悟空は此処へやって来るだろう…。
深く痕を残していく悟空に、べジータは窓から見える月を見上げていた。
冷たい冷たい光を放つ月を…。
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