□月の砂漠 −2−□

 何も気が付かない振りをするのは、ベジータには難しい事であった。
悟空に触れられるだけで、全神経が其処へと集中してしまうからだ。

 トレーニングの時は、全力でお互いがぶつかり合うがそれとこれは全く違う。
優しい指先で、細く髪を掬い上げる。躰が強張って、いやそれ以上の事を何所かで期待している自分がいる事に。
視線を合わせ様とする悟空に、ベジータは敢えてそうはしない。
視線を合わせてしまえば、自分が『負け』を意味する様で。だが悟空は簡単には諦めようとはしていない様子だ。

 上からベジータの様子を伺うかの様に顔を覗き込む。髪に触れていた指先は耳朶へと下りてくる。
幾ら鍛えても、鍛える事の出来ない其処は全身を粟立てる。

二人を取り巻く風が冷たい夜風と感じるその時でさえ、ベジータは暑く感じた。

耳朶から首筋、肩へと下りていくその指にベジータは気が付かない振りをする事はこれ以上無理な事だった。

視線を無数の星から少しずらした所に、悟空のエメラルドの瞳がベジータの姿を映し出している。
絡み付く視線に逃げる事も出来ずに。
 ベジータは動けなかった。
 悟空の瞳に捕らえられていたかった。
 誰にも邪魔される事なく、二人きりの空間。

周りは無数の木々、森に囲まれている。遠くで狼の遠吠えさえ聴こえて来る。浪漫チックな物など一つも無い。だが悟空の視線はそんな周りの事など全て無にする様な力が込められていた。
黒曜石の様な瞳に見つめられている時とはまた違った物であった。

視線を絡み合わせているうちに、ベジータは気が付かなかったが悟空の指は更に動いていた。戦いでボロボロになったアンダーシャツの下に這われている。

「…っ!」

悟空が一点の突起を指で触れると、ベジータの目を細める。が、抵抗の現れでは無い。
ベジータの反応に悟空は唇の端をあげて笑う。何時の間にか横に座って居た悟空はベジータの上に覆い被さる形になっていた。幾度と無く重なり合う唇。角度を変えて更に深く。何度も何度も。唇の端に唾液が伝う。

「くふっ…」

長い吐息の呪縛から解放されたベジータは、熱が洩れる。首筋に這わされるその舌先にビクンと反応してしまう。引き締まった胸筋に悟空の右手が触れる。触れられているうちに声が意識をせずとも零れ落ちる。

「あっ…ん」

「なぁ、ベジータ。ベジータはオラのもんだよなぁ?」

「何を…言っているんだ…そんな…訳が…」

必死に抵抗するがもう手遅れだった。超化していた筈のベジータの髪の色は漆黒に戻り、悟空の愛撫を必死に受け入れようとしている。

微かに開かれた瞳から垣間見える悟空の瞳は冷たくも見えた。

「おらのもんだって言ってくれ…」

「…あっ…」

悟空はベジータの胸の突起をきつく噛んだ。うっすらと血が滲む。そんな事に悟空はお構いなしに反対側の突起を口に含み同じく噛んだ。

「早く言わぇーと、ここ噛み切っちまうぞ?」

「いっ…や、止めろ…カカ…ット…」

「それでもいいんか?」

観念したのかやっと口を開くベジータの瞳にはうっすらと涙が浮かんでいた。

「…俺は…カカロットの…ものだ…」

言い終わると、頬を伝う涙にそっと舌が這わされていた。
先程までとは違う唇の這わせ方。柔らかい感覚が頬をくすぐる。

「ベジータ、ちゃんと言えるじゃねぇーか。始めっからそう言ってれば、こんなにしなかったのに…」

先程強く悟空が噛んだ胸の突起を優しく舐めあげる。

「すまねぇーな。ベジータ。痛かっただろ?」

「…痛いに決まってるだろう…」

フイっと悟空から視線をそらす。が見下ろしている悟空の瞳は温かかった。そんな瞳に見つめられているのは悪い気はしなかった。むしろ居心地が良かった。

 下腹部に這われる大きな掌はベジータをやんわりと包み込み、上下へ擦りあげる。
トレーニングウェアーの上からでもはっきりと判るそれは硬く膨張し、熱を持っている。
内に秘められている熱を早く吐き出したくて、胸の奥深くの欲望がドロドロと溶け出しそうで。思わず口にしてしまう。愛しい者の名前を。

「カカロット…」

呼べば必ず返って来るその声はベジータを狂わせる。

「もっと、その声で呼んでくれ…何時もみたいに…おらの名前を…」

耳元で囁かれる低い声。

「カカロット…もっと…」

悟空の手の動きに併せてベジータの腰も浮き、一層硬さを増した。

「ベジータ、オラにもしてくれ…」

ボロボロになっている胴着を空いている手で起用に下げ、悟空自身をベジータの前に晒した。
其れはベジータの中に入れたくて怒張を増している。ベジータは其処に恐る恐る手を翳す。
触れた時に悟空も熱い吐息が洩れる。
覚束ない右手で悟空自身を上下に擦り上げる。先端からは透明な液体が零れ始めた。

「ベジータ、オラもう…中にいれてぇー」

「……」

無言でベジータ自身から手を離す。べジータのアンダーウェアーを勢い良く脱がし、自らの中指を口へと含んだ。節の太い指にネットリと絡められる唾液、ベジータに見せ付ける様に悟空は舐めた。ベジータは悟空の指先から視線を外せなかった。まるでベジータ自身を舐められている様な感覚に陥ってしまったから。

唾液で濡らされている中指を、脱がされた双丘の中心へと宛がう。
指が触れただけでも、背筋がゾクゾクとする。円を描く様に少しずつ中へと進入して来る指にもう躰がおかしくなり始めていた。中指を完全に根元まで飲み込むとベジータを抱え上げた。悟空の上に覆い被さる格好になり、そのまま指を引き抜かれ悟空を再び飲み込む。

「くはっぁ…」

完全に咥え込むと悟空は下からゆっくりと突き上げた。



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